2012/04/16

ラクをしながら成長し続けること


今日は「ラクをしながら成長し続ける」ということについて。

ここ1~2年の間に僕は「ラクをする」ということを覚えました。

それまでは「がむしゃらにやること」「ひたむきにやること」がひとつの美徳だと考えていて、力が残っているかぎり100%にやる感じでいつもやっていました。でも、「がむしゃらにやる」以上に良いパフォーマンスを出し、もっと高い成長率で成長していくためには「ただがんばるだけではいけない」ということを少し前に知りました。

がんばって到達できる限界を越えてさらに先に行く、自分の限界を可能なかぎり押し広げる。そのために必要なことがあります。それは、「ラクをする」ということ。

ラクをする。ムリをしない。ストイックにやらない。これこそが、自分の成長に責任を持つ人が知るべき第一の原則だと思います。

「いやいや、ラクな道を選ばず、ストイックにやるからこそ伸びるんじゃないの」と言う人もいます。確かにあるレベルまではそれで行ける部分もありますが、歴史上のホンモノ、本当の一流になった人たちを見ると、辛さを成長のカギにしていた人はあまりいないようです。他人から見て辛そうに見えるようなことであっても、本人は楽しんでいたり、ある種のラクなやり方を見つけている、という感じがします。

これは、自分自身身をもって体験をした感じからも、ポジティブ心理学から学んだ感じからも、真理なのかなと思います。が、世の中の支配的な認識はこれとは逆のように感じます。つまり、「ラクをする」のと「思いっきり成長する」は相反するもの、と考えられている感じがします。

このあたりのことに気づいたいま、これから少しずつ周りの人たちにこのことを伝えていければなと思うのですが、「じゃあ実際にどうしたらいいの?」となったときにノーアイデアだとアレなので、実際にラクをするためのポイントをいくつか考えてみました。今パッと出てきたものを3つほど。


1 戦略を立てること

ひとつには、「戦略を立てる」こと。「センリャク」というとちょっと堅苦しい感じがするので、もっとワクワクできそうな言葉で言いかえるなら、「作戦を立てる」ということ(「作戦」と聞くとつい子どもの頃を思い出すのは僕だけでしょうか)。

いい作戦を立てるためには自分の頭でモノを考えなくてはいけないので、ある意味ラクとはいえませんが、、頭で考えれば考えた分だけ物理面でラクになります。

「どうすればラクになるのか?」 「どうすれば昨日よりも少ない手間で済ませられるか?」 常にそう考えていると、仕事はラクになるし、そのうえ、イノベーションをちょこちょこと生み出せるような感じになります。その進化は、そのまま成長につながります。

アインシュタインはかつて
仮に自分の命がかかった問題があるとして、その解決に1時間使えるとしよう。私なら、最初の55分は適切な問いを立てるために使うだろう。なぜなら、適切な問いさえ立てられれば、問題を解くのには5分とかからないのだから。
If I had an hour to solve a problem and my life depended on the solution, I would spend the first 55 minutes determining the proper question to ask, for once I know the proper question, I could solve the problem in less than five minutes.
と言ったそうです。アインシュタインのこの言葉と「戦略を立てる」ということの間には強い関係があるのかなと思います。


2 強力な欲求を使うこと

ラクをする、なおかつ成長し続けるために大事なことのふたつめは、「強力な欲求を使う」ことです。「戦略を立てる」が自分の外界のデザインにあたるとすれば、これはその逆、自分の内側のデザインに関するものです。

欲求というとマズローの欲求階層説が有名ですが、ここ数十年の神経科学の目覚ましい発展によって物理的メカニズムから見た欲求の構造が明らかになってきました。人間の大脳は3層構造になっていて、大きく
  • 大脳新皮質
  • 大脳辺縁系
  • 大脳基底核
の3つに分かれています。そして、おおづかみに分けるとそのそれぞれが
  • 大脳新皮質: 理性
  • 大脳辺縁系: 感情
  • 大脳基底核: 本能
を司っています。

そして、それらの間の関係性として、
  • 新皮質(理性) <<< 辺縁系(感情) <<< 基底核(本能)
というのが成り立ちます。つまり、各領域が出す指令のパワーは大きく異なります。ただ異なるのではなく、「大きく異なる」というのがポイントです。

つまり、理性と感情が綱引きをすると大方感情が勝ち、感情と本能が綱引きをすると本能が勝ってしまいます(通常は)。人によって理性が強いタイプ、弱いタイプ、なんて言い方をしたりしますが、この違いは決定的です。だから、この前提にのっとって欲求をどう利用するか、ということが大切になってきます(このあたりは『脳が教える!1つの習慣』がわかりやすかったです)。

欲求の取り扱いに関するオプションとしては大きく、
  • それでも、理性の力を信じて感情や本能に打ち克とうと試みる
のと
  • 理性の力でうまく感情や本能を味方にする
というのがあるかと思いますが、多くの人がやっていないけれど、断然うまくいくのは後者だと思います。自分の欲望を敵とみなすのではなく味方にする。欲望と戦い欲望を殺すのではなく、欲望をうまく方向づけ、活かす。克己ではなく、活己(うまいこと言ったような気がします)。「欲望の合気道」といってもいいかもしれません。

このあたりで役に立つのが、行動心理学や健康科学などの本能を満たす技術、そして、宗教その他の感情を満たす技術です。このあたりの分野は統合・体系化がなされておらず各自が自分で取捨選択することになりますが、アカデミックな人だけのものにしておくのはもったいないぐらい、とても進んでいます。

でも、もちろん一般論だけではいけません。一般論と対をなして働くのが、一般論では語りえない「自分を知る」ということです。教科書には載っていない自分の本能や感情をよく眺める、ということです。

スナフキンは
大切なのは 自分のしたいことを
自分で知ってるってことだよ
なんて言ってましたし、これも一理ある気がします。

自分を知ること。そして、その欲望を望ましい方向に方向づけることで、ストイシズムのリスクを避けながら楽しく成長し続けることができます。


3 フローに入ること

ラクをするためのみっつめのポイントは、「フローに入る」こと。これは、自分の外界だけ、内側だけ、という区分けが難しい、その中間に位置するようなポイントです。

ここでいうフローとは、ミハイ・チクセントミハイが提唱した「フロー」(Flow)のことです。スポーツ科学(?)の分野などではゾーンと呼ばれたりもするこの言葉は、要は、集中のあまりに我を忘れてその作業と一体となるような感覚のこと。子どもの頃はよくこんな経験したけれど、大人になってからはほとんどなくなった、という人も多いのではないでしょうか。詳しくはWikipediaのフローのページなどで。ちなみに、チクセントミハイはフローに入る条件もまとめていて、「8つの条件」といった形できちんと整理しています。

僕がこのフローを認識しその面白いメカニズムを積極的に利用し始めてから一番驚いたのは、「フローは気持ちいいだけでなくその最中のパフォーマンスも格段に向上する」という点でした。普通に意識的にがんばるのとは、また違った効率が生まれます。

フローにはちょっと中毒性もあるので無闇に使っていいかどうかはわかりませんが、、これも、ラクをするテクニックのひとつにあげられるでしょう。

このフローのアイデアはとても面白くて、「ラクをしながら成長をする」という今回の文脈の中だけで語るには惜しい大きなテーマですが、フローの大きなメリットのひとつはこの「ラクをして成長する」というところに確実にあると思います。


・・・ということで。少し長くなってしまいましたが、ラクをしながら成長し続けるためのコツを3つほど挙げてみました。

実は、1~3のいずれも実践するには人間のメカニズムを学んだり頭を使ったりする必要があるため、ただぼーっとすればいいという意味での「ラク」ではありません。だからこれをラクと呼んでいいかどうかは議論の分かれるところかと思いますが、でも、不必要な心理的リスクを背負ってストイックにやるのとはまた別の、「楽しい成長の仕方」(しかもストイックにやるよりももっと成果の高いやり方)を考えるうえでは、このように「ラクをする方法」を身につけることが不可欠だと思います。


生きているかぎり学び成長し続けたい!けど、しんどいのはイヤ!」という欲張りな人にぜひ参考にしてもらえればと思います。他にもよいポイントがありましたらぜひ教えてください。